−納豆は、食を彩る 主人公− >


第21回気仙沼大会《ダイジェスト版》
宮城県気仙沼市に194点が大集結。
第21回審査結果
日本一は愛知県の山下食品さん。

No90 20th鑑評会当日。早食い大会、納豆食堂、ねば〜る君!
No89 20th鑑評会前日。偕楽園に水戸黄門像。納豆記念碑にねばり丼。
No70 世界最小の納豆屋
毎日12個は至高の12個

No.164 ショートケーキ風ミニタルト
カラフルで可愛く出来ました☆
No.133 生ハムと黒豆のカナッペ
黒豆納豆が見事にマッチ!
No.117 シュー納豆
ブルーベリーと黒豆が絶妙☆













納豆文化村インタビュー

マルキン食品 株式会社
 代表取締役社長 /吉良元雄さん

インタビュアー:椎名彩乃

今日は2年連続、3度目の農林水産大臣賞を受賞したマルキン食品さんの美味しさの秘密を伺いに熊本までやってきました。この日本一に輝いた納豆の美味しさを抽象論ではなく具体的に、そしてわかりやすく教えてくださったのは代表取締役社長の吉良さんです。

彩乃:鑑評会の会場でもインタビューさせていただきましたが改めまして、このたびの農林水産大臣賞の受賞おめでとうございました。二年連続三度目の大臣賞、そして四度目の入賞となりますね。もうさまざまなところで話されてきたかと思いますが、ここでもう一度受賞されたときのお気持ちを教えていただけますか。

吉良さん1 吉良さん:とても嬉しいですよ。何度とっても本当に嬉しいです。

彩乃:鑑評会の前夜祭での吉良さんのスピーチをお伺いしていて、とても自信があるように感じたのですがやはり今回の受賞を予想されていたのですか?

吉良さん:いやいや、農林水産大臣賞が絶対に取れるとは考えていませんでしたよ。味覚というものに絶対というものはありませんし、またその土地の味覚や風土というものの違いもありますから。でも何かの賞は受賞できるであろうとは思っていましたよ。やはり、出品するからには私も自信を持った納豆を出していますからね。

彩乃:でも三度目の大臣賞となりますと、もう胸を張って日本一の納豆メーカーと言えることができますよね!!今回は審査員としても納豆を試食し、ご覧になったかと思いますが他社さんとの違いは何だとお考えになりましたか?

吉良さん:そうですね、どの納豆もすばらしいと思いますが、残念ながらその納豆のおいしさのピークを過ぎているものが多かったように見受けられました。残念ですね。

彩乃:その原因はなんなのでしょうか?

吉良さん:工場で作ったときに一番おいしい状態にしてしまっているのではないでしょうか。もしくは配送の段階で過発酵してしまったか。私たちは工場で食べたときには「おいしい!」と思える納豆ではいけないと教育しています。工場では少し若いくらいが丁度いいんです。お客様の食卓に上がったときに一番おいしくなっているのがベストですからね。でもその状態に持っていくのが一番難しいんですよ。

彩乃1 彩乃:輸送経過に関してまで全てにわたってずっと見ているわけにはいきませんからね。

吉良さん:はい。チルドの状態でずっと輸送できればいいのですが、すべてそのとおりにすることはできませんから。そうすると糸引きが少なかったりしまうことがあるんです。運送業者さんの時間管理と温度の設備がきちんとしていないと、あるお店の周辺からだけ苦情がくるということもあるんですよ。

彩乃:そんなこともあるんですか!!せっかくおいしい納豆を作ってもそれでは本当に残念ですよね。

吉良さん:そのようなことができるだけ起こらないようにですね、物流センターが嘉島にあるのですが、納豆輸送時の温度管理を徹底するようにしているんです。私たちはおいしい納豆を作る技術はある。ですから物流でいかにきちんと管理できるかが今後大手さんと立ち向かってゆく決め手になると考えているのです。

彩乃:マルキン食品さんの納豆はすべて中国産大豆での受賞ですが、中国産大豆にこだわる理由はなんですか?

吉良さん:安くてうまい!!これが一番の理由ではないでしょうか。中国の大豆は味が濃いんです。それは栄養価が高く、特にたんぱく質と糖分がとても高く納豆に適しているんです。昔から満州大豆はうまいといわれてきましたからね。

彩乃:そうなんですか、なんとなく国産大豆で納豆をという雰囲気があるような気がしていて。でも以前納豆を試食させていただいたときの口に広がる印象的な甘さがあったことになんとなく納得です。

吉良さん:また私たちが使っている大豆は中国でも北のほう、とても寒い地域で栽培されている大豆を使用しているんです。以前視察の人に大豆の栽培場ををチェックしていただいたのですが、「農薬はまったく使用していませんよ、だってあまりにも寒くて虫すらいないんですから」との一言。 そうなんです。寒すぎて虫がいないんですよ!また河から流れてくる肥沃な土で栽培されていますので肥料も一切使っていません。ですから、完全なる有機栽培の大豆を作ることができるんですよ。高温多湿な日本では完全な無農薬というのは本当に難しいですから。

彩乃:さらにさらに納得です!!

吉良さん:でも何だかんだ言ってもやっぱり中国大豆はおいしいから使っているのですよ。一時的なことだったんですが、天候の関係で中国からの大豆が使えなかったことがありまして、他の大豆を使用していたことがあったんですがやっぱりお客さんはちゃんと味をわかってくださっている。少しずつ売上が落ちていってしまったんです。他の大豆はやわらかく煮ても発酵の段階で固くなっていくんです。やっぱり中国大豆だな!しみじみそのときに感じましたね。

彩乃:今回で入賞された納豆が4つということになりましたが、実際はどの納豆が一番人気があるのですか?

彩乃3 吉良さん:『元気納豆九州本仕込み』ですね。今までの納豆とは少し発想を変えて作ったものだったんです。この商品に関しては「納豆が食べられるようになりました」とか「納豆嫌いの子供がこちらの納豆なら食べられるんです。三時のおやつに出すと喜ぶんですよ」などと嬉しいお手紙やお言葉を多くいただくことができました。この納豆の開発に関しては平山のほうが詳しいので。

彩乃:平山さん、開発にあたってのお話をお願いできますか。

平山さん1 平山さん:はい。この納豆に関してはより地元の人に愛されるような納豆を作ろうということで開発にあたってきたんです。九州のお醤油はお気づきの通り関東のお醤油と違って甘いんですね。このし好性を生かし甘めのたれが好まれるのではないか、これがそもそもの発想の初めです。もともと納豆のたれはかつおのだしがベースのものが多いのですが、それをお醤油自体のうまみと甘味に生かしました。そして何度も何度も試作品を作り、食して、たまにギョッとするほど甘いたれなどもあったのですが、何度にも重なる試作の結果この『九州本仕込み』が出来上がったんです。結果として九州以外の方にもご支持いただき、企画、開発に携わった若手のメンバー全員嬉しく思っています。

彩乃:吉良さんが考えるおいしい納豆とはどのような納豆だとお考えですか?

吉良さん:難しい質問ですね。納豆は伝統食品ですが、やはり時代とともに味も変化してきます。人間の味覚が変わってきますから。でも今おいしい納豆と考えているのは、やわらかくてでも歯ごたえがある。見た目は白くてにおいが少ない納豆です。「おいしい納豆とは」という紙を工場のみんなに配ってありますが、そちらにはもっと具体的に書いてありますよ。

彩乃:昨日その紙を工場で拝見させていただいたのですが、本当に詳しく具体的に書かれてあってびっくりしてしました。あれだけ具体的にかかれてあると、何をするべきかという目標が明確になって皆さんのやる気もよりいっそう増しそうですよね。

美味しい納豆 吉良さん:ありがとうございます。この二つの納豆を見てください。こちらはこのまま鑑評会に出してもいいぐらいの出来の納豆、そちらはまだ少し若い納豆です。こちらは全体的に厚く白くなっているでしょ。これが良い状態の納豆なんですよ。

彩乃:本当ですね。こちらの納豆のほうが、納豆菌がより厚くついて全体的に白くてきれいですね!!匂いもすごく豊かな感じがしますね。

吉良さん:これがわかれば彩乃さんも審査員になれますよ。

彩乃:そんな無理です無理です。

吉良さん:匂いに関してですが、熊本県は九州の中でも一番納豆の消費量が多い県なんです。ですから納豆に対するこだわりも強く、納豆の匂いが少ないものはあまり喜ばれません。匂いが少ないとはいってもある程度納豆らしい匂いは最大限に引き出したいですよね。あっちゃいけないのがアンモニア臭です。また関東では極小粒が好まれるようですが、熊本では中粒に近い小粒が好まれています。糸引きに関しても糸引きが弱いとすぐにクレームがきてしまうんですよ。
糸引きといえば椎名さん。納豆菌を食べる菌って知っていますか?


彩乃:そんな菌がいるんですか?初めて聞きました。納豆菌は他の菌よりも強いと思っていましたから!!

吉良さん:それがいるんです。その菌がついてしまうと、どんなにおいしそうにできた納豆も、かき混ぜて糸を出しても10分で糸が消えてしまうんです。つまり10分後にはただの煮豆ですよ。

彩乃:怖いような不思議なような、でもちょっと見てみたいような・・・

吉良さん:納豆メーカーの周りにしかいない菌らしいんだけど、その菌が入ってしまうともう大変。納豆がまったく作れなくなってしまうんだから。

彩乃:いったいそれはどうすると入ってきてしまうんですか?

吉良さん:やっぱり衛生的にしていないからでしょ。今でこそ完璧な衛生管理の中での生産ですが、何十年も前でしたから、ほんの少しの気の緩みが完璧でなくしてしまっていたんでしょうね。全国どこの納豆屋さんでもこの問題には頭を痛めていたようです。当時はまず原因がわかりませんでしたから。ただただ神頼みですよ。現在では大学の研究室によって『納豆菌を食べる菌』(←ファージと名前が付けられたそうです)があるということがわかりましたから神頼みをしなくてすむようになりましたよ(笑)

彩乃:それにしても不思議な菌がいるんですね!

まぜまぜ 吉良さん:そうですね。私たちが考える良い糸引きとは、「混ぜると透明で強い糸引きを有する物」なんですね。うちの納豆は上手に食べると糸が容器に残らないんですよ。

彩乃:えっ??そんな食べ方があるんですか??

きれいでしょ!! 吉良さん:そうなんですよ。以前NHKさんから「特別な食べ方があるらしいと聞いたが教えてくれ」という電話があったのですが、「電話では説明できない」と言ったことがありましてね。その食べ方がこれなんですよ。

吉良さんが通常円を描くように混ぜるところを上下にかき混ぜながら召し上がっていました。そしてその容器を見てみると・・・

彩乃:全然糸が容器にくっついてない!!普通はねばねばと容器に糸がくっついているのにまったくないですよ!!

吉良さん:それだけ糸が強いということなんですよ。

彩乃:ひゃ〜ビックリです。

納豆も極めれば上品に食べられる!!ロマンスグレー吉良さんの納豆の召し上がり方を見てそう思わずにはいられませんでした。
後半はマルキン食品さんの略歴と吉良さんの素敵なご趣味について詳しく伺っていこうと思います。

Vol.2


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