−納豆は、食を彩る 主人公− >


第21回気仙沼大会《ダイジェスト版》
宮城県気仙沼市に194点が大集結。
第21回審査結果
日本一は愛知県の山下食品さん。

No90 20th鑑評会当日。早食い大会、納豆食堂、ねば〜る君!
No89 20th鑑評会前日。偕楽園に水戸黄門像。納豆記念碑にねばり丼。
No70 世界最小の納豆屋
毎日12個は至高の12個

No.164 ショートケーキ風ミニタルト
カラフルで可愛く出来ました☆
No.133 生ハムと黒豆のカナッペ
黒豆納豆が見事にマッチ!
No.117 シュー納豆
ブルーベリーと黒豆が絶妙☆














バンクーバー ●たまオーガニックライフさん/バンクーバー
(レポート : 納豆文化村 久田隆敏)

MOMO 「GO! CANADA GO!」の看板で溢れかえる、オリンピック一色のバンクーバーに、おそらく世界一小さな納豆屋さんといっていいだろうというお店がある。

毎日12個の納豆を作り続けていると聞いて、開会式を夕方に控えた午後2時前にノースバンクーバーのシーバスを降りた。

ノースバンクーバーは、あいにくの肌寒い小雨模様だったが、車でロンズデールキーに出迎えてくれた杉山さんの澄んだ声が響いた。「久田さんですかー、こんにちはー!」杉山さんはとても明るくて気さくな、張りのある通った声の持ち主だった。

「たまオーガニックライフ」さんという名前の通り有機食材を扱っているお店が、どんな納豆を作っているのか興味は尽きない。車に乗り込んで数分、広い通りに面したビルの1階に、TAMA ORGANIC LIFE の看板を見つけた。緑と黄を基調とした看板は、オーガニックを連想させる。楽しみが膨らんだ。
日産12個、俄かには信じがたい数字である。手間暇を考えれば利益も出ないだろうし、それを毎日続けているのだから、とてもすごいことだ。

日本では800種類以上の納豆を今まで味わってきたが、果たしてカナダで作られる納豆はどのようなものなのか。きちんと納豆になっているのかなどと微妙に心配もある反面、この明るい気さくな杉山さんが作る納豆への期待も大きかった。

玄関横メールボックス
玄関横メールボックス

Ambrosia
Ambrosia

Red Peppers
Red Peppers

立派な葉つき人参
立派な葉つき人参

農家さんの説明
農家さんの説明

キノコ類
キノコ類


お店は通りに面した部分がガラス張りで、入口寄り前半分に商品を並べ、奥半分が冷蔵庫や保管庫、料理スペースなどになっている。
きちんと動きやすいようにレイアウトされた明るいお店である。杉山代表とスタッフ4人、合計5人で運営されている「たまオーガニックライフ」さんのお店は、間口5m、奥行き20mくらいだろうか。各地から集められたオーガニック製品がずらりと並べられていた。 スタッフの皆さんと
久田:街全体がオリンピック一色ですね。

杉山さん:そうなんです、楽しみですね。実は私は秋田県の大館市出身なんですが、スキーの複合に4人の選手が地元の秋田県から出ているんです。それも地元の近いところから出ているので、活躍してくれることを楽しみにしてるんです。

お店 久田:オリンピックが開催されるだけでもすごいのに、地元から4人も出られていると、もう力が入ってワクワクしますね!ところで「たまオーガニックライフ」さんの「たま」は、どういう経緯で名づけられたのですか。

杉山さん:はい、店名の「たま」は丸い玉、調和を意味していて、霊(たま)というスピリチュアルの精神を併せ持つ店名にしたくてつけました。

久田:ほう、調和を持つスピリチュアルですから広い意味で心のあり方をもいつも考えていたいということですね。素敵な名前ですね。始められたのはいつ頃からですか。

杉山さんから説明を受ける
杉山さん:私はバンクーバーに結婚移民して今年で26年になるんです。主人は毛皮店を営んでいたのですが、私は専業主婦として子育てに専念する毎日でした。その後主人の事業倒産や主人の闘病生活があり、その頃ですね、自宅のガレージで仕入れて売ると言う小さな商売を始めたんです。

その後次第に輪が広がってきて、15年前くらいに友人のガレージを借りて今の商売の形になって来たんです。以前は、食品を何のこだわりも持たずに買っていたんですが、あるとき有機と出会って、その素晴らしさと大切さを知ることになったのがきっかけです。


久田:いろいろと歴史がありますね。でも常に前向きでいらっしゃる。

杉山さん:現在入っているこのビルのマネジャーをしないかと頼まれて、ビルを管理するようになり、あるタイミングがあって、現在のお店を出したんです。当初は現在の4分の1くらいの店先だけの面積でしたが、8年前かな、現在の大きさになったんです。

久田:タイミングもそうでしょうが、やはり力量を培って来られたからこそ、このお店を出すことが出来たんでしょうね。有機と出会って考え方も変わりましたか?

杉山さん:そうですね。始めた頃からずっと、ファーマーをサポートしたいと言うのが根底にあります。やはり与えられた大自然を大切に、人や生き物に対して思いやりや優しさを持つことが基本だと思います。これは今後もずっと持ち続けるでしょうね。

私たちが扱うものは、顔の見えるもの、素性のしっかりしたもので、消費者に安心と安全が届けられるものに限っています。日本の食品メーカーさんでもそのようにしているところは多いと聞いています。



久田:では、今日の本題ですが、納豆についていろいろお伺いしたいと思います。日産12個ということですが、少量なだけにとても大変な作業ではないですか?

杉山さん:そうですね。12個という少量なんですが、おかげさまでお客さまからも好評をいただいていますし、亡くなった主人が作り続けてきたものですので、手間暇がかかっても、ずっと作り続けたいですね。

納豆について 久田:思い入れをお持ちなんですね。12個だと作りづらいと思いますが、どのような工程で作られていますか?

杉山さん:大豆の浸漬は、大きなボールで14〜15時間やっています。そのあと圧力鍋で蒸しますが、蒸した時は大豆は柔らかいですね。それから納豆菌を振りかけて、オーブンで発酵させます。

久田:納豆菌はカナダで手に入りますか?どのようなものをお使いになられてますか?

杉山さん:ご存じだと思いますが、日本の成瀬菌です。東京にあるね。行ったこともあるんですよ。輸入して使っています。

久田:ほう、素晴らしい。納豆菌のメーカーさんをお尋ねになられたとは! 12個だけ発酵させるのは、温度管理などが難しいと思いますが、どのようにされているんですか?

杉山さん:オーブンを使って、最初42度で7、5時間。次に40度で12、5時間、合計20時間、発酵させるんです。

久田:結構本格的じゃあないですか。途中で温度を変えるのは大変でしょうね。いろいろ試行錯誤をされてきて、材料や環境に合った杉山さんが培って来られたノウハウなのでしょうね。 ところで、かなり大きな容器ですが、納豆は1パック何グラムですか?

こんな感じです 杉山さん:200gです。このスチロールケースは実はハンバーガーの容器を流用しているんです。

久田:すごい、200gですか! 日本では数十gのものが多いので、このボリュームはまさしくカナダサイズですね(笑) 納豆にかけている切り込みが入っているのは白っぽいけどフィルムですか?

杉山さん:これはワックスペーパーです。十文字の切り込みを中央に入れて、醗酵させています。大豆はカナダのオーガニック。日本の大豆はたんぱく分が多いのですが、種類もなく手に入らないですね。

カナダ産は種類が少なく豆腐を作ろうとしても、にがりで固まりにくいので向いていないんです。でもオーガニックの大豆は、きちんと納豆になってくれるので、カナダ産のオーガニック大豆を使っています。


ワックスペーパーは四隅と四辺がきちんとふんわりと抑え込まれていた。手作りの優しさが漂う。
オーブンで発酵させる 久田:12個の納豆を作るのに使用する大豆の量はどのくらいになりますか?

← オーブンのトレイに12個がきちんと並ぶ。だから12個か。
杉山さん:2、2パウンドのカナダオーガニック大豆を一日分として使用しています。約1kgですね。

久田:少量だと、日本では炬燵で作ったりする人もいますが、かなり本格的な工程なので驚きました。先ほど、ご主人が作り続けて来られたとお伺いしましたが。

杉山さん:はい、主人はずっと透析をしていたのですが、亡くなった日も7時から8時くらいまでお店の壁のペンキ塗りをしていたんですが、調子が悪くなり途中で帰ったんです。主人は亡くなった日も納豆を作ってました。

一段落して、出荷する時間が過ぎた納豆があってアンモニア臭が少ししていたんですが、主人が最後に作った納豆と言う事で知人に配らせてもらったんです。そうしたらみんな、愛情こもってるね、美味しいねって、食べてくれて・・・すごく嬉しかったです。


久田:そうなんですか。ご主人の納豆への愛情を、杉山さんはしっかりと受け継いで作られているわけですね。

製造後4日目と5日目、6日目のものを出してくれ試食をしてみたが、少し若い発酵で仕上げているのか6日目のものが一番味がまとまっていて旨みもしっかり熟成されていた。 ペーパーをめくったときの印象としては、ヌメっとしていなくて、全体的に菌幕で白く覆われていてきれいである。アンモニア臭はほぼない。雑味、雑臭のないきちんと仕上げられた納豆という印象を持った。

調味料いろいろ
調味料いろいろ

穀類
穀類

おにぎりもあった!
おにぎりもあった!

200gの納豆です!
200gの納豆です!

テンぺは6oz(170g)
テンぺは6oz(170g)

お客様と
お客様と

試食用の納豆
試食用の納豆

しっかり旨い!
しっかり旨い!

商品はオーガニック
商品はオーガニック

日用品も
日用品も

ドライ納豆試食
ドライ納豆試食

台秤いいですね♪
台秤いいですね♪

昆布ですよ!
昆布ですよ!

Yuki Matcha Tea
Yuki Matcha Tea

pomegranateザクロ?
pomegranateザクロ?

================= ↓大手スーパーの
納豆売場では ================= 12種類が売られていた
12種類が売られていた

英文のラベル
英文のラベル

================= ↓ホテルに持ち帰り
開けてみると ================= こんな感じ
こんな感じ


久田:納豆はバンクーバーには日本から輸入されているらしいですね。

杉山さん:はい、大手のスーパーには日本の納豆を何種類も置いているようですよ。冷凍で空輸されているようですね。

納豆を勧める 久田:実際に納豆を作られているのは、バンクーバーでは杉山さんだけでしょうね。

杉山さん:ええ、多分うちだけだと思います。

久田:少量の12個とは言え、出来立ての新鮮な納豆ですからバンクーバーの人にはありがたいですよね。

オリンピックが始まるということで、客足がいつもの半分くらいじゃないかと笑われていた杉山さんだが、なかなかどうして次から次へとお客様がやってくる。
久田:またお客様がいらっしゃいましたね。

杉山さん: いつも来る方なので、ちょっと納豆の説明をしてみましょうか。

常連さんが買い物に来ていて、納豆取材だからと3人ほどに食べてもらったが特に違和感はないようで「なかなかいいじゃないの。もらって帰るわよ」などの会話があった。お客様とのやり取りをムービーで撮らせてもらった。



お客様へ納豆の説明をされる杉山さん(動画)

当然だがなかなか堂に入っている。納豆が初めてのカナダの人にわかりやすく説明されていた。反応も上々のようだ。
久田:「たまオーガニックライフ」さんはしっかりと根づいていらっしゃいますね。これからお店をどのように展開されていく予定ですか?

杉山さん: 店を大きくしようとは思っていません。土を感じながら作る大切さを知っている人たちの作った、顔の見えるものをずっと大切にして行きたいですね。天候が悪いと作物も良くないので、それならそれで、ありのままを説明するスタンスをずっと持ち続けたいと思います。

大きくしないで小さく続けることは大切だと思いますね。利益を追求したら、歪みも出るし、本来の姿勢を失いかねないですよね。


「土を感じながら作る大切さ」、いい言葉だ。 買い物に来るお客様もインテリ系が多く、健康に気を払っている人たちに見受けられる。 それぞれの商品に説明書きがあるのを丹念に読み、内容を納得してから購入している。

杉山さんとお客様は完全に信頼関係で結ばれている。 今日のランチは お客様が来るとすぐその人の名前を呼び日常の情報交換をする姿は、杉山さんのオーガニックコミュニティーが出来ている証。 しっかりと根付いているようだ。

日系のコミュニティーの中でのお客様が大半を占めているのではと思ったが、地元のカナダの方の方が多い。 その意味においても、杉山オーガニックファミリーとも言うべきコミュニティーを、異国のカナダで作り上げている手腕もたいしたものだ。

配達に1日200kmを走った日もかつてはあったという。最近は仕入れ量も増え、農家さんや問屋さんからも配達してもらえるようになり少しは楽になったようだが、このように常に頑張り続ける姿はとても凛々しくて素敵だ。しかも好結果をも生んでいる。

店を大きくしないで、顔の見える範囲で頑張りたいとの杉山さんの話には、共感する部分、感心させられる部分が数多くあった。 店を大きくして本来あるべき姿を見失いかねない怖さを杉山さんは百も承知されている。

これからもオーガニックの本質をずっと守り続けて欲しい。そして、毎日12個の愛情あふれる納豆を造り続けて欲しい。 外国にこのような納豆への愛着が強い人がいる事を、とても嬉しく思うと同時に、日本の伝統食品の納豆がもっと異国の地で受け入れられるように頑張って欲しいものだ。
お店にて
バンクーバーのダウンタウンにはセブンイレブンが十数店舗展開されていた。 当然ながらカナダの人の嗜好に合わせて品揃えがされている為か、 taquitoと言うらしい 残念ながら納豆は置かれていなかった。 レジ横では、いつでも高温で提供できるようにフランクフルトや春巻きのようなもの(taquitoと言うらしい)を、アツアツの金属棒の上で回転させているのが印象的だった。カナダだ。

中国系の大きなスーパーにも行ってみた。相当大きなスーパーだが、日本から冷凍で輸入された納豆があった。数えてみると12種類。 冷凍庫から出したばかりの、ほぼ冷凍状態のものが、ブランドごとに並べられている。

数種類を買って帰りホテルで食してみたが、やはり冷凍状態のものがほとんどで、しばらく解凍する必要があった。 日本でもお馴染みのブランドが多く、日本のフィルムの上に英語のシールが貼られている。3パックないし4パックのものが売られていた。 朝10時頃と午後4時頃に行ってみたが、30個近く減っていただろうか。それなりに結構売れている。

玄関前の看板 英エコノミスト誌が世界127都市を対象に実施した「住みやすさ」調査で、カナダのバンクーバーが1位になっている。そんな世界一住みたい街と評される、美しいバンクーバー。人口200万人のバンクーバーはカナダ第3の都市。あらゆる都市機能を備えているにもかかわらず、ゆったりとした自然に囲まれ、快適な暮らしを送る事が出来る。

今回12日間の滞在であったが、自信のあるものだけを販売されている杉山さんは、しっかりとバンクーバーに根差し、確かなポリシーのもとにお店の運営をされていた。
そんな杉山さんの作る納豆は一日たったの12個だけれど、12個それぞれに思いを込めている素敵な納豆であった。 働いているお母さんがたくさんいる、そのお母さん代わりとも思って作っている納豆。12個の納豆は一個づつがとてもキラキラと輝いて見えた。

オリンピックで特に地元カナダ選手の競技に賭ける激しい情熱には圧倒されるものがあったが、真剣にオーガニックに賭ける情熱は杉山さんにも共通したものがあった。物事の本筋や基本を見極めて、ブレないでしっかりとやり続ける事の意味合いはとても大きい。素晴らしいことである。

失礼を承知で言うなら、久々に闊達でまっすぐな人と出会った気がした。 杉山さんはまさにオーガニックのプロ、オーガニックコンシェルジュかも知れない。

杉山さんとスタッフの皆様に、そして、納豆大好きなカナダの方々、これから納豆を好きになる全員に、心からエールを送りたい。

Tama Organic Life
734 Marine Drive NOrth Vancouver,BC
V7M 1H3
TEL/FAX 604.987.8198
公式サイト(日本語版)は → こちら
公式サイト(英語版)は → こちら

日本の優秀なこだわりメーカーさんと相通ずるものが、異国のバンクーバーでしっかりと根付いていることがとても嬉しく、長く続けて頂きたいものだ。 日本からさすがに生納豆は持参できなかったが、メーカーさんにお願いして、ドライ納豆や味付納豆、辛味納豆を持参したところ、とても興味を持っていただいた。

納豆は、日本の伝統的食文化を代表する食品。日本古来の伝統食品が異国の地でも受け入れられ、そのバランスのとれた素晴らしさが少しづつでも浸透し広まって欲しいものだと強く思った。

世界で一番小さな納豆屋さんかも知れないが、その心はとても大きく、ゆったりとした優しさに満ち溢れていた。

納豆文化村代表:久田隆敏

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